「絵本はむずかしい!?」 はらぺこあおむし
そして、絵本こそが最もむずかしい本です。こう申しあげると、たいていの人が、えっ?という表情をされます。「絵本なんて、ひらがなと絵だけのうすい本だし、内容も、だれにでもわかる他愛のないもの」と感じておられるからでしょう。
だからこそ、こどもの本の売り上げの主流は、テレビのアニメ絵本や、シンデレラ、白雪姫などの古典をけばけばしく絵本じたてにしたもの。創作ものでも、幼稚園や保育園を通して購入することのある月刊絵本など、中身の薄い子どもに媚びたものです。
また、附録のついた幼児のための雑誌を、絵本と思っておられる人もいて、そういうものは大人にとっての週刊誌と同じということに気づくべきです。
では、どうして、ひらがなと絵だけの絵本が難しいのでしょうか。それは、絵本は、単に子どもを表面的におもしろがらせたり、大人のただの思いつきや、絵日記ふうのものを本にしたものではないからです。
絵本は、ほんらい、楽しいものです。(勿論、その楽しさの質が問題でもあるのですが。)でも、それだけではありません。
まず、絵本の絵は、子どもにとって初めて出会う美術です。
そして、絵本は、私達大人にはもう遠く見えなくなった子どもの心を描きだすものであり、子どもを、生きることへ向けて励まし、その楽しさを伝え、また、いずれ旅だたねばならないこの世界と人生への、水先案内の役を果たすものです。その意味で、絵本は子どもにとっての文学であり、芸術といえます。
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